ALL'OMBRA DI UNA COLT
監督: ジャンニ・グリマルディ
音楽: ニコ・フィデンコ
出演: スティーヴン・フォーサイス、コンラード・サンマルティン、フランク・レッセル、アンヌ・シェルマン、ヘルガ・リネ、ペペ・ガルボ、フランキー・リストン
1965年 イタリア映画



平日の過去記事アーカイブシリーズ・・・




日本公開はマカロニ晩期の1968年ながら、実際に製作されたのは最盛期の65年というマカロニ・ウェスタンの逸品。
マカロニといえば、裏切り、リンチ、殺戮が横行するギラギラとしたイメージが先行しますが、
これは老ガンマンと若いガンマンの悲哀や心の葛藤を描いたマカロニらしくない感動のウェスタンです。
確かに劇中、相当人が死にますが、ドラマ部分もしっかりしていて、ラストの老ガンマンが見せるなんとも言えないやるせなさといったら・・・。
平和な暮らしを求めて用心棒稼業から足を洗おうと、若いガンマンが相棒の老ガンマンの元を去りますが、
別れ際に老ガンマンは自分の分け前を町にいる自分の女に渡すようにと若いガンマンに金を託し、
さらに「自分の娘に手を出したら殺すぞ」と釘を刺します。
若いガンマンは、実は老ガンマンの娘とは既に恋仲で、静かな農場で娘と一緒に暮らそうと考えています。
娘と2人で農場を探してある街にたどり着くと、そこは悪徳資産家が牛耳る無法の街で、農場の購入を巡って
資産家と配下の無法者たちと対立します。
一方、老ガンマンは若いガンマンが娘と金を持ち逃げしたと誤解し、若いガンマンを殺すために後を追う・・・というお話です。
本編の前半はなんかあらすじのように話が進んでいくというか、それぞれのエピソードが薄いのでなかなか話に入り込めません。
しかし、中盤あたりから俄然面白くなって、クライマックスの銃撃戦へと突入し、感動のラストへのなだれ込むので見応えはあります。
なんでだろうと思っていると、劇場公開時は上映時間90分だったのに、DVDのパッケージを見ると79分しか無く、
フィルムが一部紛失してしまったのか、10分以上も短くなってしまっていたのでした。
確かに、予告編を見ると本編には無いシーンがいくつか見られるので是非オリジナル全長版で見てみたいものです。
キャストは、当時マカロニ・スパイ映画「殺しはドルで払え」等で売り出し中だったスティーヴン・フォーサイスを始め、マカロニ・ウェスタンにはお馴染みといった面々で固めています。
「星空の用心棒」のコンラード・サンマルティン、「西部悪人伝」のフランク・レッセル、「荒野の用心棒」のペペ・ガルボ等、そういえばヘルガ・リネは当ブログではお馴染み(^^;)「077」シリーズにも出てました。


音楽は、イタリアのニコ・フィデンコ。
本作はもともとカンツォーネ歌手だったこの人が初めて手がけた本格的スコアだと記憶しています。
ニコ・フィデンコ、は1960年の「太陽の誘惑」の主題歌を歌って、これが大ヒットしたことから映画音楽の道に入ったと言われています。
本作のスコアの最大の魅力は、なんといっても一度聴いたら忘れないユニークな主題歌のインパクトにあります。
ハーモニカやトランペットをフィーチャーした緩やかなバック・ミュージックに合わせて、なんとイタリア語の「歌」ならぬ「語り」が入ります。
今でいう「ラップ」ですね、これは。
グラウコ・オノラートのドスの利いた迫力の低音ボイスがイタリア語で語りかけるカッコいいトラックです。
まさに、「マカロニ・ラップ」!!
ただ英語版は別の人が「語って」いて、こちらの方は「続・荒野の用心棒」のロッキー・ロバーツと同様、かなりショボい(T_T)
この映画は絶対英語版音声で観てはいけません。
劇伴も、この人ならではのセンスを感じさせるトラックが並んでいて、
オープニングシーンで2人のガンマンがやって来るバックにながれる口笛とギターをメインにしたスコアなど、かなり印象に残るスコアが多く、
メロディ・メイカーとしての優れた才能が既に開花しているといった感じです。
なお、本作のスコアは少人数で細々と録音されたそうで、口笛を吹いているのはニコ・フィデンコ自身だそうです。
サントラは、もともと主題歌を含む4曲入りのものしかなかったようですが、最近のマカロニもののリリース・ラッシュに合わせて、
なんと17曲も増曲した完全盤CDがイタリアで発売されました。
メインとなるモチーフのバリエーションがほとんどですが、完全盤として1枚のアルバムとして発売されることは嬉しい限りです。
なお、この人のスコアで有名なのは、マカロニ・ウェスタンの他には「黒いエマニエル」シリーズと呼ばれたエロティック・ムービーのスコアがあります。
「黒いエマニエル」ものは、ラウンジ系のスコアが心地よく、映画を離れても鑑賞出来るモンドなサウンドが魅力です。



・・・と、ここまでが過去記事。

今では、このサントラもダウンロード版があります。