MILLER'S CROSSING
監督: ジョエル・コーエン
製作: イーサン・コーエン
音楽: カーター・バーウェル
出演: ガブリエル・バーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、アルバート・フィニー、ジョン・タートゥーロ、ジョン・ポリト、J・E・フリーマン、マイク・スター、スティーヴ・ブシェミ
1990年 アメリカ映画


なんの変哲もないマフィアもののドラマなのですが、コーエン兄弟の手にかかればこんなに面白くなるのかと驚いた一編。
僕が若い頃は、このコーエン兄弟のどこか回りくどいストーリーテリングが苦手で、
食わず嫌いなところがあったのですが、実際に観てみるとこれが面白いのにようやく気が付きました。
実はこの兄弟の作品、今までどれも途中まで観てやめちゃってて、昨日初めて本作を最後まで観たのでした。
コーエン兄弟の作品って、だいたいオープニングが地味なので玄人受けはするけどだいぶ損しているなあと思います。
よくよく観てみると兄弟が自分たちで手がけた脚本も素晴らしいし、映像や音楽も美しい。
他の作品も改めて最後まで観てみなくては、と反省してます(^^;)
20年代アメリカを舞台に、アイルランド系とイタリア系、2つのマフィア勢力が台頭している中、
アイルランド系のボスの片腕的な男がボスの情婦と出来てるのがボスにばれて追い出されますが、
自分の身を守るため対立するイタリア系マフィアの側に寝返ります。
しかし、寝返るという証に目障りな情婦の弟を殺せという命令を受けて・・・・・というお話ですが、
主人公の男、観ていて結局何がしたいのかよく分からない。
アイルランド系から追い出され、命を狙われかねないのに、イタリア系をハメようとしたり、情婦の弟を逃がしてやったり、どっちの味方なのか判然としなくなります。
その辺の居心地の悪さに加えて、罠にはめようとしてバレそうになったりとハラハラさせられて面白い。
マフィアものですが、派手な撃ち合いは必要最小限のところに凝縮されているという感じで、総じてスタイリッシュな映像で描かれています。
マフィアの世界を計算尽くで渡り歩く主人公を演じるガブリエル・バーンが渋くてカッコいい。
ボス役のアルバート・フィニーも懐かしかったですが、一番驚いたのは、ボスの情婦役のマーシャ・ゲイ・ハーデン。
つい最近、あの「ミスト」で狂信的な「キ○ガイおばさん」を演じた女性と同一人物だったと知ってビックリ。
もともとアバズレっぽい顔立ち(失礼m(_ _)m)だったとはいえ、18年後のこの変わりようは衝撃でした。


音楽は、カーター・バウエル。
この人、コーエン兄弟の作品を数多く手がけています。きっと相性がいいんでしょうね。
コーエン兄弟作品以外ではスパイク・ジョーンズ監督作品のスコアで知られています。
初期の頃にはアメリカのインディ系作品のスコアを中心に、いろんなタイプの作品を器用にこなしてきた感のある人です。
大がかりなフルオケの曲より、小編成なアコースティックな感じのスコアが多いという印象があります。
本作は、マフィア映画なのに、すこぶる美しい曲が添えられているのに驚きます。
特に1曲目のオープニング・タイトルは素晴らしい。
森を見上げる格好でカメラが移動するバックに流れる曲で、とても美しいメロディを持っています。
この曲は「ショーシャンクの空に」や「大いなる遺産」の予告編でBGMとして使用されるほど感動的なスコアです。
どことなくモリコーネの「ミッション・トゥ・マーズ」に似てます。
ただ、この映画スコア自体がそうたくさん付けられいるわけではないので、サントラCDは
劇中使用曲に「キング・ポーター・ストンプ」や「ダニー・ボーイ」等のスタンダードを加えても全体で30分にも満たない内容でちょっと残念。
トーンを抑えたスコアで地味な印象はぬぐえませんが、とても叙情的なサウンドでなかなか味わいのあるアルバムです。
この人は、地味なりに個性のあるスコアを書く人で、1998年の「ゴッド・アンド・モンスター」では、LA批評家協会賞の音楽賞を受賞しています。
フルオケのスコアよりポップでアコースティックな雰囲気のスコアに手腕を発揮するようで、どことなくトーマス・ニューマンに近い感性を感じます。
サントラ盤は地味な割に結構息が長く、現在も入手可能です。


Miller’s Crossing: Original Motion Picture Soundtrack/Carter Burwell

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