THE EXORCIST
監督:ウィリアム・フリードキン
音楽:ジャック・ニッチェ他
主演:リンダ・ブレア、エレン・バーンステイン、マックス・フォン・シドー、ジェイソン・ミラー、リー・J・コップ、キティ・ウィ
ン、ジャック・マッゴーラン、ウィリアム・オマリー
1973年 アメリカ映画


70年代オカルト・ブームの火付け役となった記念碑的作品。
12歳の少女リーガンに突然悪魔が取り憑き、幸せな一家に異変が起き始め、リーガンの表情は次第に悪魔の形相に変貌していきます。
空中浮遊や家族にゲロを吐きかけたり、科学では説明のつかない超常現象の数々に、遂に母親は教会に悪魔払いを依頼する‥・というお話。
少女に取り憑いた悪魔と神父の戦いを描いた作品ですが、意外にも人間ドラマに重きが置かれていて、
全編ドキュメンタリーのようなタッチが作品に得も言えぬリアリティを与えています。
この映画、冒頭のイラクの遺跡発掘現場でのシーンから、異様なムードが満点で、ほんと怖い。
ウィリアム・ピーター・プラッティ原作の同名小説の映画化作品ですが、当時は原作の元ネタはアメリカで実際に起こった事件だとか、
映画の監修にキリスト教会がからんでいるとか言われていて、かなりオカルティックで重厚な雰囲気を感じました。
(な~んてカッコいいこと言ってますが、僕はこの映画を子供の頃に月曜ロードショーで初めて観ましたが、
 そのときはもう怖くて怖くて最後まで観れませんでした(∵;))
後にディレクター・カット版が公開されていますが、こちらでは幻の「スパイダー・ウォーク」のシーンが観られます。
ファンの間では不評ですが、階段をこの姿勢で下りてくるリーガンを観たときはマジで驚いた(^^;)
ディック・スミスによる特殊メイクが正に職人芸のリアルさで、愛らしいリンダ・ブレアの顔が身の毛もよだつ悪魔の顔に豹変するメイクがすごい。
あたり構わずゲロを吐きまくるシーンも衝撃的でした。
このゲロ、グリーンピースを潰したペーストを使ってポンプで押し出したらしいのですが、ホンモノのゲロにそっくり。
本作は、お食事をしながら観てはいけない映画ですね。
ホラー映画なのに、同年のアカデミー賞を2部門で受賞しており(脚色賞、音響賞)、さらに7部門でノミネートされています。
確かにそれだけのことはある徹底したリアリズムで描かれる究極のオカルト映画です。
そういえば、本編とは関係ないですが、親戚の子がリー・J・コップ演ずる「キンダーマン警部」に異常に反応を示して、
「きんた-まん!ギャハハハハ!」と大笑いしてたのを思い出します。


音楽は、ジャック・ニッチェのアンダースコアの他に現代音楽を中心とした既成曲が使用されています。
特に有名なのが、映画への無断使用で訴訟沙汰にまでなったマイク・オールドフィールドの「チュープラー・ベルズ」。
本編ではほんのちょっとしか使用されませんが、
今で言うオタク・プログレ少年だったマイク・オールドフィールドが2300回もオーバーダブして作ったこの曲のインパクトは大きかった。
宅録で全ての楽器を自分一人で演奏して録音したこの曲は、後のホラー映画音楽に多大な影響を与えました。
「サスペリア2」や「ハロウィン」、「ファンタズム」なんかも、この曲がなければ生まれなかったかも知れません。
この他にペンデレツキを始めとする現代音楽の中から、神経を逆撫でするような曲ばかりがセレクトされ使用されています。
「チューブラー・ベルズ」以外は、ほんと「音」で恐怖を表現したようなものばかりが集められています。
このキリキリした乾いた音が映像のリアリズム描写をさらに引き立てていたと思います。
本編に感情移入させるための盛り上げ役としてのフィルム・スコアはここにはありません。
ただひたすら淡々と描かれる恐怖を音でなぞるだけの「空気」のような存在です。
この頃のウィリアム・フリードキン監督の音楽センスにはいつも脱帽するのですが、
マイク・オールドフィールドを使うあたり、後の「恐怖の報酬」でタンジェリン・ドリームを起用することを考え合わせると、このおっさん、結構プログレ好きなのかなあと思ったりします。
サントラは、現代音楽のコンピレーション・アルバムとしても優れた作品と言うことができます。
なお、この映画、当初はラロ・シフリンがスコアを書いていたのにリジェクトされてしまった経緯があります。
シフリンが手掛けたスコアは、「チューブラー・ベルズ」等に比べるとやはり地味で大人しい印象のスコアで
リジェクトもやむなしという感じです。
シフリンはこの作品のために作ったスコアのイメージを、後の「悪魔のすむ家」で膨らませて使用しているように思います。

Exorcist/Original Motion Picture Soundtrack

¥2,451
Amazon.co.jp