PSYCHO
監督:ガス・ヴァン・サント
音楽:ダニー・エルフマン
主演:ヴィンス・ヴォーン、アン・ヘッシュ、ジュリアン・ムーア、ヴィゴ・モーテンセン、ウィリアム・H・メイシー、ロバート
フォスター、リタ・ウィルソン
1998年 アメリカ映画


ヒッチコックの傑作サスペンスをガス・ヴァン・サント監督がリメイク、というより完コピした作品。
オリジナルに色付けしただけのような、まるで同じのオープニング・シーンに始まり、話の展開もカット割りもそっくり、
ラストのオチまで同じという展開にはちょっと疑問が残ります。
時代設定が現代になっているところ等、若干今風の解釈が含まれてはいますが、ほとんどオリジナルを忠実に焼き直したという感じです。
違うのはキャラの風貌くらい。ノーマン役のヴィンス・ヴォーンはオリジナルのアンソニー・パーキンスとはまるで対照的です。
最初から変質者に見えるヴィンス・ヴォーンの方が、はじめからヤバイ感じがプンプンで結構リアルだっ
たりして。
このリメイク版、しっかりラジー賞(ワースト監督賞、リメイク・続編賞)を取っていますが、
オリジナルの「サイコ」を知らない人向けの映画だと思えば決して悪くない作品だと思います。
今の若い世代がわざわざ白黒の古くさいオリジナルを観るとはあまり思えないし、
こうしてカラーでキレイに作り直してあれば往年の名作も若い世代も受け入れやすいんじやないかなと思います。
世間では酷評されていますが、悪くいうのはオリジナルを知っているおっさん、じいさん世代ばかりということに気づきます。
オリジナルを知っている人は、どうしても本家と比べて観てしまう、というより無意識でアラ探しをしてしまいます。
実はこの作品、僕を含めてオリジナルを知っているおやじ世代が観てはいけない作品なのかも知れません。
おやじ世代が観るなら、ツッコミどころを探して楽しむといった心の広い見方が出来ないと楽しめないと思います。



音楽は、これまたダニー・エルフマンがオリジナルを完全コピー。
オリジナルを手掛けたバーナード・ハーマンをリスペクトしているこの人の登板はベストの人選といえるでしょう。
ひたすらオリジナルの再現にこだわった演奏に、エルフマンの意気込みが感じられます。
エルフマンの片腕、スティーヴ・バーテクによるオーケストレーションによるところも大きいと思いますが、
これはまさにオリジナルに忠実な完コピです。
スリリングなテーマ曲のシャープな切れ味は最高です。
劇伴で聴かれるストリングスを掻きむしるような引きつった音もすごくシャープで迫力があります。
サントラは、既成曲中心でスコアは3曲だけのインスパイアード盤とフルスコア盤の2種類が発売されましたが、
フルスコア盤は残念ながら既に廃盤のようです。
オリジナルもサントラはハーマンの再録盤しか無かったように記憶していますので、
録音技術の進歩を考えると、こちらの方がよりダイナミックな音で録音されており、「いい音」で聴くことができます。
なお、インスパイアード盤の方は、ペット・ショップ・ボーイズの「スクリーミング」を始め、
サイコをイメージさせる様々な楽曲が収録されていますが、
面白いのはライオンロックによるオリジナルスコアにブレイクビーツをかぶせたトラック。
先達の遺業を冒涜するような所業ですが、このパンクでアナーキーな解釈は個人的には許せるかも(^^;)。