FROM NOON TILL THREE
監督: フランク・D・ギルロイ
音楽: エルマー・バーンスタイン
出演: チャールズ・ブロンソン、ジル・アイアランド、スタン・ヘイズ、ダグラス・V・フォーリー
1976年 アメリカ映画


その昔、TVで何の予備知識も無くアクション・ウェスタンだとばかり思って見始めて、思わぬ展開に2度ビックリしてしまった西部劇。
アクション・スターとして一番脂が乗った時期のブロンソンの作品群にあって、一際異彩を放つコミカル・ウェスタンで、
ブロンソンが間抜けな三流強盗を演じていて、劇中、奥さんジル・アイアランドと珍しくべったりしっ放しの珍しい作品。
硬派な男臭いブロンソンを求める人にはとんでもない作品だと思いますが、個人的にはもう故人となってしまったブロンソン夫妻の
おしどり夫婦ぶりを映画の中で垣間見ることができて、とても微笑ましいと同時になんだかとても切ない想いが残る一編です。
ラストもブロンソン映画史上、1、2を争う「アッと驚く」終わり方をします。
銀行強盗を働くため街へ向かう4人組のうち、主人公ブロンソンだけが途中で不吉な夢を観たことから、
街の手前の古い洋館で一人仲間が強盗をして帰ってくるのを待つことにします。
その洋館には美しい未亡人が一人で住んでいて、ブロンソンはそこで約3時間ほど時間をつぶして仲間の帰りを待つことにしますが、
ひょんなことからその未亡人とデキちゃって、お互い夢中になってしまいます。
制限時間が近づくにつれて名残り惜しむ2人のところへ、街から少年がやってきて、強盗が捕まり、これからみんな縛り首になると告げます。
ブロンソンは仲間が死んだらこのまま洋館に残れると内心喜びますが、なぜか未亡人は「私のことはいいから助けに行ってあげて」とブロンソンを送り出してしまいます。
やむなくブロンソンは洋館を出ますが、強盗の仲間を捕まえるため街からやってきた男たちに追われるハメになります。
途中で出会ったインチキ歯医者を脅して服を交換して、歯医者になりすましますが、その間に歯医者はブロンソンと間違われて射殺されてしまい、
亡骸は未亡人の元へ届けられます。
未亡人はてっきりブロンソンが死んだものと思い気絶してしまいます。
街では未亡人が強盗といい仲になっていたと白い目で見られますが、未亡人の純粋な愛に心うたれた作家がこれを本にしたところ、
なんとこれが大ヒット、ベストセラーになります。
未亡人は本のモデルとして全国から注目を集めます。
そのころ、ブロンソンはインチキ歯医者と間違われて捕まり裁判の結果、投獄されて・・・・。
そこから更にまた新たな展開があるという、とてもコミカルなウェスタンです。
個人的には意外性ということもあってかなり楽しめました。


音楽は、これまた故人となってしまったエルマー・バーンスタイン。
「荒野の7人」、「勇気ある追跡」等で知られるこの人にとって西部劇の音楽はお手のモノですが、
本作はちょっと趣向が違うので、本編ではあまり豪快なウェスタン・ミュージックは聴かれません。
その代わりにブロンソンのイメージには合わない、なんともチャーミングなオルゴールの曲がメイン・タイトルになっていたり、
しみじみとした味わいの曲が半分近くを占めています。
このメイン・タイトルのメロがモチーフになっていますが、
本作の聴きモノは、このモチーフを使ったバーンスタイン作曲、アラン&マリリン・バーグマン作詞の主題歌「Hello And Goodbye」。
この曲はジル・アイアランドが歌っていて、ラストのエンド・クレジットでブロンソンとアイアランドがダンスを踊るバックに流れて大変効果的です。
2人が亡くなってしまった今、改めて観るとこのシーンはとても感慨深いものがあります(T_T)
ウェスタン風のスコアもあるにはあるのですが、派手さは無くあくまで馬に乗って軽やかに疾走するといった風なイメージの曲です。
他の劇伴もメインのモチーフのバリエーションだったり、サロン・ミュージック風にアレンジされていたり、全体の統一感もしっかりあります。
なお、劇中、この曲は何度か顔を出しますが、なんと、エルマー・バーンスタイン本人がピアノの伴奏者として出てきてピアノを弾くシーンがあります。
サントラ盤は映画公開当時は発売されず、昨年米Vareseレーベルから「コンドルの砦」とのカップリング盤として限定3000枚でリリースされました。
但し、残念なことにマスターがモノラル音源だったらしく、音がスピーカーの真ん中から出てきます。
この限定盤CDは2枚組仕様になっていて、本作からは全31曲収録されています。