EASTERN PROMISES
監督: デヴィッド・クローネンバーグ
音楽: ハワード・ショア
出演: ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル、アーミン・ミューラー=スタール、イエジー・スコリモフスキー、シニード・キューザック、ミナ・E・ミナ
2007年 イギリス/カナダ/アメリカ映画


デヴィッド・クローネンバーグ監督が「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に続いて描く「まっとうな」映画。
本作では、昔のクローネンバーグ作品の定番だった、ウニョウニョ動く奇怪なものは一切出てきません。
しいていえば、サウナでの男のフルチン・バトルで見え隠れするヴィゴ・モーテンセンのチ○ポコぐらいでしょうか。
(モザイクなしでホントに見えてるもんなあ・・・・時代は変わった。)
ちょっとお下劣なことを言ってしまいましたが、本作は決して下品な作品ではなく、
その逆でとても洗練されたスマートなバイオレンス・ドラマです(どういう意味だ?)。
R-18指定になっていますが、何カ所かエグいシーンやエロいシーンがあったりするのでそうなったのだと思いますが、それを除けばとてもよく出来た上品なドラマだと思います。
クローネンバーグが普通のドラマを撮るとこんなになるんだと再認識させられました。
クールでスタイリッシュな映像も素晴らしく、予備知識無しで観たらクローネンバーグの作品であることが分からないかも知れません。
クローネンバーグは、いつも必ず神経質そうな顔をした男優を主役にもってきますが、これまで作品毎に主役の男優を替えています。
しかし、今回は初めて2本続けて同じヴィゴ・モーテンセンを起用しています。監督と息が合ったのかな。
ストーリーは、ロンドンを舞台に、一人の助産師とロシアン・マフィアの運転手との奇妙な心の交流がベースになっていて、
この2人をつなぐのが、薬局でいきなり破水して倒れた妊娠中の14歳の少女。
搬送先の病院で出産に立ち会った助産師は、女の子を出産して死んだこのロシア人少女の身元を調べるため、ロシア語で書かれた少女の日記を持ち帰り、ロシア人の伯父に翻訳を頼むとともに、
日記に挿んであったロシア料理店の名刺を頼りにその店を訪ねると、店の前でその店の運転手だという男にばったり出会い・・・・・という風にお話が進んでいきます。
日記には、実は少女はロシアン・マフィアに捕まり麻薬漬けにされて売春をさせられていて、妊娠に関してはさらにとんでもないことが書いてあって、
それが公表されるとロシアン・マフィアのボスがお縄になってしまうということから、マフィアのボスが日記を取り上げようと画策します。
こういう風に話が展開していきますが、日記には何が書いてあるのか、ヴィゴ・モーテンセンが何者なのか、いろんな謎が仕掛けられているわりに、
出し惜しみせずに頃合いを見計らって謎がどんどん明かされていくので、サクサク観れてしまいます。
ただ、終わり方があっさりしすぎかなと思います。続編でもあるんだろうか・・・
ヴィゴ・モーテンセンも良かったし、ナオミ・ワッツも相変わらずキレイですが、
僕としては、ヴァンサン・カッセルの怪演が目を引きました。


音楽は、クローネンバーグと言えばハワード・ショア。
本作のスコアは、クローネンバーグ作品の音楽としては、どちらかと言えば異色の音で、基本的に「切なく」「美しい」スコアです。
普段のクローネンバーグ作品だとどこか重苦しい「陰鬱」な空気が漂う救いようのない音が多いのですが、
本作はゴールデングローブのオリジナル作曲賞にノミネートされるだけあって、心に染みる素晴らしいスコアになっています。
マフィアものとはとても思えない美メロを持ったスコアで、
バイオリンやクラリネットがソロを取り、切なげなフレーズを奏でるとても上品な音に仕上がっています。
特に全編で大きくフィーチャーされているのが、バイオリン。
若干まだ21歳のスコットランドの新星、ニコラ・ベネデッティが演奏するこのバイオリンの調べが素晴らしいです。
テーマ曲は、3拍子(ワルツかな)の不安げで物悲しいメロを持った曲で、地味ながら心に残る音です。
ロシアン・マフィアものですが、いかにもなロシアっぽいフレーズは使っていないところがいいですね。
ストリングスも上品な音だなあと思っていたら、演奏はロンドン・フィルハーモニック・オーケストラで、妙に納得。
最近のサントラにしては収録時間は短めで40分もありませんが、地味ながら中身は濃厚で聴き応えがあります。
なお、iTunesでは、「Stars On The Knees」というボーナストラックが1曲多く収録されているというオマケ付きです。

Eastern Promises [Original Motion Picture Soundtrack]

¥1,521
Amazon.co.jp