UN GENIO,DUE COMPARI,UN POLLO
監督:ダミアーノ・ダミアーニ
音楽:エンニオ・モリコーネ
主演:テレンス・ヒル、ミウ・ミウ、ロバート・シャールボワ、パトリック・マグハーン、クラウス・キンスキー
1975年 イタリア/フランス/西ドイツ映画


 


平日の過去記事アーカイブシリーズ・・・





70年代マカロニ・ウェスタン晩期の作品で、コミカルな演出でそこそこ面白いのに、残念ながら本邦未公開に終わった幻の作品。
邦題はあの名作「ミスタ一・ノーボディ」の続編のようなタイトルが付けられていますが、
テレンス・ヒルのキャラが似ているだけで、実は全く関係の無い作品。
テレンス・ヒルの役名もジョー・サンクスって名前が付いてます。
マカロニ・ウェスタンのタイトルって、昔は国によって結構適当に付けられてたので、
ヨーロッパでは「風来坊」シリーズにあやかって、「Trinty」をタイトルの頭につけてた国もあります。
本国イタリアの原題は「天才、二人組、間抜け」というそうです。
「続・夕陽のガンマン(いい奴、悪い奴、醜い奴)」のパロディみたいですね。
ストーリーは、どろぼう3人組が、騎兵隊がインディアンから土地を買い付けるために用意した資金30万ドルに目を付けて、
騎兵隊に化けてこれを盗もうとする・・・というお話。
原題にある「天才」がテレンス・ヒルで、機転を利かせて騎兵隊を散々撹乱させたり、
パトリック・マグハーン扮する騎兵隊の少佐(まぬけ)をまんまと騙したり、大活躍をします。
2人組の片割れ、ミウ・ミウも「バルスーズ」とは対照的なキュートな女性を演じています。
ダミアーノ・ダミアーニ監督といえば、社会派監督というイメージがあるのですが、
本作ともう1本のマカロニ・ウェスタン「群盗荒野を裂く」はどちらもライトな作風なのでちょっと意外です。
でも、さりげなくインディアン問題を取り上げてるのがこの監督らしいところかも。
今でもDVDが売れてるか分かりませんが、撮影したカメラによってフィルムのクオリティに落差があって、
急に画面が汚くなったり、B級、C級映画の香りがするところがとても残念です。
オープニング・シーンのカメラ・ワークがやけにセルジオ・レオーネぽいなと思ってたら、
どうやら撮影に本人さんも同行していたらしく、一部を監督してたらしいです。
どうりで、長回し撮影が執拗に出てくると思った(^^;)
クラウス・キンスキーが最初の方で、ほとんどゲスト出演のように出てきますが、
冷血漢っぽいこの怪優をテレンス・ヒルが散々コケにして遊ぶシーンには笑いました。
なお、本作はマカロニ・ウェスタンにしては豪勢にアメリカ・ロケを敢行していて、
ホンモノのモニュメント・バレーをバックにテレンス・ヒルやミウ・ミウが活躍するので、
ある意味感動モノです。






音楽は、イタリアの巨匠、エンニオ・モリコーネ。
本作は、映画自体は「ミスター・ノーボディ」とは大して関係無いながら、
音楽に関していえば本家の姉妹編ともいえるよく似た雰囲気を持った楽曲が並んでいます。
テーマ曲も、モロに「ノーボディ」を連想させる曲調でビックリします。
軽くて陽気な中にも、センチメンタルなフレーズを盛り込んだとても楽しいテーマです。
楽器の編成もよく似ています。
相変わらずムーグで子供のサンダルのような変な音を出しています。
リコーダーやアコギが出てくるところも「ノーボディ」にそっくりです。
本作でも、モリコーネの楽曲をグッと引き立てるエッダ・デル・オルソの珠玉のソプラノを聴くことができます。
劇伴も陽気で楽しい楽曲が多く、カントリー調のバイオリンとバロック楽器のファゴットが同居する等、
かなりキテレツな編成で演奏される曲もあります。
この辺の実験的なごった煮感覚はモリコーネならではのものではないでしょうか。
笑えるのは、「ノーボディ」では、ワグナーの「ワルキューレの騎行」をモチーフにした「ワイルド・バンチのテーマ」があったのに対して、
本作では、同じような曲調の曲にベートーベンの「エリーゼのために」を混ぜ込んだ曲があるところ。
このように、音楽は続編といってもいいぐらいよく似た雰囲気を持った不思議な作品です。
サントラは、日本盤がかつてSLCから世界初CD化と銘打って発売されてましたが、
残念ながらすぐに廃盤になってしまっています。再発されないかなあ






・・・と、ここまでが過去記事。

なんと現在では、ダウンロード版が入手可能となっています。ディスクは高いのでまだ持っていない方は安価なダウンロードという選択肢もアリですよ。